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面戯をしたという。各島から召集され水軍に配置された楽工たち三十余名を動員し、十二月二十八日頃から執事・吏房などの監督下に練習した。三十日の埋鬼行列には木の仮面をかぶった両班・大おくさん・めかけ・からす仮面(赤黒くて鼻が豚の口のようで鳥に似た顔)・チュジ(獅子、昔は三名は入る大きさだったが最近では一名が入る大きさ)・ヒビ仮面(ヨンノ)・僧広大(チュンメグ)仮面などがついて歩いた。からす仮面とヒビ仮面は独舞だった。特に僧広大仮面は埋鬼行列の前に立ちながら、埋鬼をした後、僧打令・念仏・千手経を唱え、部屋に入って一人で鬼神を追い払ったという。
次は地方の官衙と民間で共同して行われた儺礼の様子を見てみよう。『東国竜時記』十二月の條によると、江原道高城の風俗として官衙と民間で共同して行われた儺礼の様子が見られる。
江原道高城地方では年末に祠堂で神を迎え、官衙だけでなく村落の家々を訪問し、儺礼を挙行した。農楽隊の地神踏みと同一の姿である。ところで“儺神の類い”ということばを通してこの行事が際礼であることを明らかにしている。
次は『東国興地勝覧』に紹介された、済州道の民間で行われた儺礼の様子である。
風俗が淫祀を崇尚し、山・藪・川・池、たかいおかひくいおか丘陵墳術、木・石、全てを祀る。毎年正月一日から十五日まで男女巫堂が神の旗を撃げ儺戯を作す。鉾鼓が先に立ち、村落を出たり入ったりすると、(人々が)あらそって財物と穀食をだし祭祀する。

 

 

 

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